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Uesu(waste)

ハノイの街を掃除する「雑巾」

・新しい雑巾と市場の古い雑巾を交換する。

・古い雑巾を縫い合わせて新しい雑巾を作りましょう。

・あなたが雑巾を縫っている間、針が見えたり見えなかったりしますが、あなたはなんとかそれを真っすぐに縫うことが出来る。

・あなたが縫っている間、ベトナムの綺麗に見える部分と見えない部分について教えてください。

・ハノイの街をこの雑巾で掃除しましょう。



ベトナムの市場ではある特定の柄の雑巾をよく目にします。それらはどうやらベトナムの工場で作られ、ベトナム内で消費されています。私は未使用のその特定の雑巾を購入し、ハノイの市場で配り、それと交換する形で市場の古い雑巾を集めました。今頃、市場で使用されているものは彼らがそもそも使っていた雑巾とほぼ同じもので、それらはただ、彼らにとって少し新しくなっただけです。笑われたり、感謝もされましたが、不思議そうでした。私は「こっちの方が綺麗だから使って」と伝えました。



交換された中には、雑巾として使われていた穴の空いたベットシーツなどもあります。それらを全て何重にも重ね、縫い合わせて大きな雑巾を作りました。布を強くするために、ベトナムの女の子たちと隅々まで「刺し子」(直線のステッチ)を施しました。「刺し子」は、どの国でも共通の、布の強度を上げるために使用される基本的な染織技法です。その大きな新しい雑巾で、古い雑巾を集めた場所であるハノイの市場や、ハノイの道路を掃除しました。


掃除中、何度も警察に質問された際に、“美術”とは一切言わず、ただ「掃除がしたい」と彼らに訴えました。街が汚いことにうんざりしているハノイの人々、そして、何より社会主義国であるベトナムでは、生活はもちろん美術への検閲が厳しく、発表する作品の詳細を政府に提出し、許可をもらう必要があります。許可を得ていても尚、検閲調査を受けることも。下手をすると国を追われるほどシビアです。警察の方はこの“掃除” に戸惑っていたようですが、「いいことだから続けなさい」と言ってもらえました。


このような過程を踏みながらも尚、この行為は単なる平面制作過程に過ぎない、と考えています。掃除の行為そのものは、絵画の技法で言うところの一種の“サンディング”と違いありません。と同時に、雑巾でもあるそれは、やはり雑巾として正しく使用されるべきであり、今後も使用されては損なわれ、修復され続けます。


この雑巾は、その度に新作として発表されます。




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