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重力と虹霓・沖縄 Gravity and Rainbow Okinawa

工芸の造形が生まれるところにある“両義的” な何事か

工芸の造形が生まれるところには、“両義的” な何事かが含まれていると仮定する。


“両義的”とはなにか。例えば、その時代の社会が抱えたあらゆる矛盾や政治的状況。生活とは切り離し難いがゆえに、意識下/無意識下に関わらず、それらを内包するような工芸の姿。


あるいは、それを “抵抗の形” と言えるかもしれない。例えば、重力と液体の特性、人間の身体構造の限界への抗い。自然の摂理のために損なわれ続けることの畏れに対峙する形。


もしかすると、世界のあらゆる両義的な事物を含みながら、また一方でそれらに大事なものを変えられてしまわないために、工芸の造形はかたち創られているのかもしれない。

それらは同時に、常にそこにあった、とでもいうような面持ちで。



 

作品《火炎瓶/コーラ/沖縄/1945》は 『琉球泡ガラスのコーラ瓶』である。



① 材料

沖縄のガマや海から掘り起こされた1945年製のコーラ瓶、泡盛の廃瓶、首里城の灰、辺野古の赤土、嘉手納基地黙認道路の赤土、珊瑚、黒糖など。


② コーラ瓶の再生ガラス

戦後直後、米兵の捨てたコーラの瓶は真っ二つに切断され、下部はコップとして島中で利用された。

その後、空き瓶は再利用され、再利用であるが故に気泡が入ってしまうその欠点をむしろ強みに変えるべく、黒糖や籾殻、魚の骨などを混ぜ入れ多くの泡を発生させ、それを意匠とした。これが、昨今の琉球泡ガラスの始まりとされる。


③ コザ暴動の火炎瓶

1970年沖縄市、当時のコザ市にて起きた暴動。

 米兵が主婦を車両で殺害した事件に無罪判決が下された。

その判決に対し、沖縄の市民が抗議の意味で投げたのは“コーラの火炎瓶”だった。







その他、以下のような資料を配置する。

 コーラ瓶再制作の道具類、米軍のパラシュート、米軍のパラシュートで作られたウェディングドレス写真、米軍のパラシュートを再利用したおくるみ、戦後のパラシュート製アーケードの写真、米軍のメリケン粉袋を再利用した船の帆、豚の血が塗られた船の帆、米軍服の生地を再利用したスカート 、薬莢の花瓶、コーラ瓶のランプ、 豪から掘り起こされた陶器手榴弾、戦時中に豪の中で溶けたガラス、虹色になった1945年のコーラ瓶など。





 


《重力と虹霓・沖縄》Gravity and Rainbow / Okinawa

(2021年,インスタレーション,サイズ可変,作家蔵)



本作品は2021年11月3日 ~ 2022年1月16日 沖縄県立博物館・美術館で開催された『琉球の横顔 ― 描かれた「私」からの出発』にて展示されたものです。


協力(順不同、敬称略)/

資料提供・沖縄県立博物館・美術館、那覇市歴史博物館、国吉勇、諸見民芸館

ガラス制作協力・宙吹ガラス工房 虹 (稲嶺盛吉・盛一郎はじめ工房のみなさま)

動画制作協力・水本博之、Michael Honeycomb

インストール協力・松尾海彦


【関連トークイベント】


アーティストを深く知る50分

#1 遠藤 薫(アーティスト)×沢山 遼(美術批評家)


オンラインで開催された美術館企画展「琉球の横顔~描かれた「私」からの出発」出展作家による対談。





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