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閃光と落下傘 Flash and Parachute

戦争と花火——津軽裂織で織り上げた「落下傘」

みんなが爆弾なんかつくらないで

きれいな花火ばかりをつくっていたら

きっと戦争なんか起きなかったんだな


             ―山下清


生活に根差した工芸の本質を現代美術的な視座から探るべく、テキスタイルに複雑な社会的事実が織り込まれていると考え、布を集め使用と修復の行為を繰り返す、工芸/美術作家の遠藤薫。彼女は、第二次世界大戦の徴兵を逃れるため放浪をはじめたとされる画家・山下清(1922-1971年)の言葉に触発され、戦争と花火に関するインスタレーションを制作しました。


山下の代表作である貼り絵に《長岡の花火》(1950年)がありますが、長岡の花火で打ち上げられる「白菊」は、第二次世界大戦終戦間近の1945年8月1日に起きた長岡空襲の被害者を慰霊するための花火です。ちなみにここ青森も長岡の4日前に大空襲を受け、大勢の人が亡くなりました。夏の風物詩である花火。その形色とりどりの閃光と雷薬による爆発音は、時に見る者を感動させ、時には空襲など戦争を連想させるものとなり得るでしょう。


遠藤は今回、もう着られなくなった着物を、青森を含む全国各地から譲り受け、裂き、津軽裂織の技術を学んで、落下傘(パラシュート)を織りあげました。飛行機からの脱出手段として、人命を守るために実用化された落下傘。その後、敵地を空から攻める兵士輸送の方法として落下傘降下は発達しました。長い時間のかかる織りの作業は、数多の先人たちが指摘するように、どこか祈りに似ています。そして、遠藤が青森市教育委員会蔵の民俗資料から選び出したのは、多くの人々の手を経て傷んでいる、もしくは壊れている農機具と、大切にまとわれてその時間の分だけ変化した着物の数々です。


ある日偶然、青森市立長島小学校の卒業生に教えられ、遠藤は山下清が描いたと伝えられる花火のペン画と出会うことになりました。あらゆる事物の移動によって、時と場所を超えて同じようなことが起こること。すべてが無関係ではないこと。戦争は決して終わったことではないこと。布を作り使い、なおす。そのような生活のなかの行為の延長線上で、遠藤は誰かの生の続きを生きようとしているかのようでもあります。


(テキスト:慶野結香、グループ展『いのちの裂け目ー布が描き出す近代、青森から』 (青森公立大 国際芸術センター青森)、2020年、ハンドアウトの作家説明より一部抜粋)




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